夫婦の一方が不倫をしてしまった場合に、浮気・不倫相手から慰謝料を取ることはできるのでしょうか。裁判例を見ていると、実は全ての浮気相手への慰謝料が認められることはなく、ある限られた条件でのみの浮気・不倫相手への慰謝料請求は認められています。
⑴浮気相手から慰謝料を取ることができる場合
一般的に、夫婦の関係が円満であり、その関係性を害しようとして不貞行為を行った場合には浮気相手は不法行為責任を負うと考えて良いと思われます。
一般的に、浮気・不倫相手への慰謝料請求は、夫婦が円満な婚姻生活を行うための互いの貞操を守る義務と関わっています。そして、この貞操を守らなければいけないことを浮気相手が知りながらもなお不貞行為を行い、離婚に至るなど夫婦の仲が破綻するに至った場合には浮気相手への慰謝料請求が認められる場合があります。
⑵浮気相手から慰謝料を取ることができない場合
夫婦がすでに別居しているなど、夫婦の婚姻関係がすでに破綻している場合は浮気相手が不法行為責任を負いません(最判平成8年3月26日民集50巻4号993頁)。また、浮気相手が不法行為責任を負うのは、「単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られ」ます(最判平成29年2月19日民集73巻2号187頁)。
つまり、夫婦が婚姻生活を営んではいるものの、両者のコミュニケーションが疎遠になったり別居しているように、すでに婚姻生活が破綻している場合には浮気相手に対して慰謝料を取ることはできないです。
また、浮気相手が妊娠をしていた場合にはたとえ慰謝料請求が認められたとしてもかなり少ない額に留まると考えられます。というのは、もし浮気相手が女性の場合、子の養育費などを1人で負担するというのは酷であるため、裁判所は生まれてくる子の利益を踏まえた、バランスの取れた判断をすることが求められるからです。
婚約前の浮気は、浮気相手に慰謝料請求をすることができるでしょうか。これもやはり婚姻関係にある夫婦と同じで、厳しいと考えざるを得ません。あえて認められる場合があるとすれば、婚約前のカップルが内縁関係である場合でしょう。「内縁関係」とは、社会一般から夫婦協同体と認められる実質を有しながら、届出を欠くために、法律上は夫婦と認められないものをいいます。内縁の妻と通じた男が内縁の夫に対して不法行為責任を負うとする裁判例があります(大判代償10年5月17日民録27輯934頁)。しかし、裁判例が古いことから、婚姻夫婦の場合と同様に浮気相手に対する慰謝料請求が認められるのは浮気相手が内縁状態を破綻させようとした場合などに限られるでしょう。
以上のように、浮気相手への慰謝料請求は認められる場合と認められない場合があることがわかります。もっとも、上記の裁判例は浮気相手だけに対する慰謝料請求でした。本来は浮気・不倫した配偶者の一方(有責配偶者)に対して精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求をすることはできます。
このように考えると、浮気相手への慰謝料請求は厳しいかもしれません。
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浮気・不倫相手に慰謝料請求するには
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