■地位保全または賃金仮払いの仮処分とは
仮処分とは債権者の現在の危険を防止するため裁判所が決定する暫定的な措置のことです。このうち地位保全の仮処分は労働者が労働契約上の地位を有することを仮に定める処分、賃金仮払いの仮処分は使用者に対して賃金相当分を仮に支払うよう命じる処分です。仮処分が認められるためには①被保全債権の存在②保全の必要性を疎明(一応確からしいといえる程度の証明)する必要があります。
■仮処分の申立て
仮処分は不当に解雇されたなどの切迫した状況で有効な手続きです。仮処分の申立ては裁判所に対して行います。申立ての段階で被保全債権(労働契約上の地位又は賃金請求権)と保全の必要性(解雇による生活困窮)などを疎明しておく必要があります。
地位保全の仮処分は相手方(使用者)の任意の履行を期待する処分であり、それだけで賃金の支払いは認められないため、通常は賃金仮払いの仮処分と併せて申立てます。賃金仮払いの処分が認められると、あえて労働契約上の地位を定める必要性は乏しく地位保全の仮処分は認められないことが多いです。
なお、通常の仮処分では債務者に不当な損害を与えるのを防ぐため担保を立てる必要がありますが、地位保全や賃金仮払いの処分においては労働者側が困窮していることが多いため担保を求められることはまれです。
■申立てから決定までの流れ
仮処分が申立てられると、1週間から2週間後に第1回審尋の期日が設定されます。会社側は第1回審尋までに労働者側の申立て内容と証拠を確認し、反論などを記載した答弁書を作成しなければなりません。会社側としては、被保全債権の不存在(解雇の相当性、未払い賃金の不存在など)と保全の必要性がないこと(労働者に多額の収入があるなど)を主張することになります。
審尋の当日は、双方の当事者と代理人(弁護士)が出席し、主張書面と疎明資料の提出を行います。審尋は10日から2週間に1回のペースで数回行われます。審尋の中で合意が可能なようであれば和解することもできます。和解が成立しない場合は、裁判所が申立てを認容するか却下するかを決定します。認容されたとしても必ずしも全部認容されるわけではなく、保全の必要性が認められる限度の金額と期間のみの認容となります。
決定に不服がある場合には、所定の異議申し立て手続を行うことができます。また、通常の民事裁判に移行することも可能です。
■弁護士の必要性
仮処分申立ては時間的にタイトな手続であるため会社も労働者も迅速な対応が求められます。短期間で必要な主張と証拠を整えるためには専門的な知識が欠かせません。地位保全または賃金仮払いの仮処分への対応でお困りの方はみなと元町法律事務所 弁護士山口達也までご相談ください。
地位保全または賃金仮払いの仮処分
みなと元町法律事務所 弁護士山口達也が提供する基礎知識
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